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豊中・池田発ガンバルジャン⑧ 能勢酒造

約300年間使われている井戸と子安社長

能勢酒造――

 京都との府境にほど近い能勢町吉野に、約300年の伝統を持つ能勢酒造はある。1712(正徳2)年に始めた酒造業は1972(昭和47)年に終わったが、桜川のわき水を使ったミネラルウォーターの販売に切り替え、後に手がける炭酸水とともに、プロのバーテンダーなどから高評価を得て、順調に業績を伸ばしていった。

 しかし1997年11月、町内のごみ処理場の敷地や周辺土壌から高濃度のダイオキシンが検出され、社会問題となった。能勢酒造の敷地からは離れており、製品はもちろん、桜川の水源からも何も検出されなかったが、風評のため売り上げは激減した。

 子安丈士社長(豊中商工会議所会員)は「そこで倒産してもおかしくなかった」と当時を振り返る。「そうならなかったのは、長年の商売で培った信頼関係があったから。一般消費者の売り上げは落ち込んだが、バーや居酒屋などに卸す業者が手を引くことはほとんどなかった」

 その時の経験から、能勢酒造は環境を考えた再利用瓶を使ったウーロン茶の販売に乗り出す。ペットボトル全盛の中、コスト増となる取り組みだが、環境保全に対する理解が浸透するにつれ、取り扱い量も増えている。

 能勢酒造が現在、一般消費者向けの販売に注力しているのが桜川サイダーだ。ノーマルのサイダーのほか「柚子(ユズ)サイダー」も開発し、このほど「有田みかんサイダー」の試験販売を開始した。果汁20%のわりには色も香りも控えめだが、それは無着色無香料のため。香りを楽しむユズと違い、味を楽しむミカンを無香料で飲料にするのは難しく、ワインを入れるなど工夫したという。「いわゆるオレンジジュースとは違うミカンらしさと、後味の良さが特徴です」

 有田みかんサイダーは3月16日から高島屋大阪店(大阪市中央区)で開かれる「食の都大阪」展にて販売予定。(礒野健一)
=地域密着新聞「マチゴト豊中・池田」第16号(2011年3月1日)

能勢酒造

更新日時 2011/03/03


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