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編集長のズボラ料理(588) ニンジンのマリネ

色がそこなわれないように

 大阪市大正区には、沖縄出身者が多い。沖縄料理店も多く、僕は新聞記者現役時代には島歌も聞ける店「うるま御殿」にしばしば行った。
 入社から5年ほどたったころ大阪府松原市で、ごみ焼却場反対運動に加わっていた夫婦と、取材で知り合った。それから仲良くなった。僕は転勤であちこち転居し、会う機会は少なくなったが、大阪勤務が定着すると、夫の方とはまた付き合いが復活した。
 彼は酒が好きで、僕も嫌いではない。ちょっと謙遜して書いたが、実は僕も好きなので、時々一緒に飲みに行き。うるま御殿にも連れて行ってもらった。以降、会社の同僚や友人を誘って行くことになった。
 お互いに定年になり、ダラダラとした生活を送っている。共稼ぎだった妻の方はちょっと違った。同じ時期に定年になり、なぜか僕が先達(案内人)をしている遍路旅に加わってきた。夫と同様の酒好き、正確にはビール好きで、遍路の宿でもよく飲んだ。
 ここまでは僕や夫と同じだが、彼女はちょっと違った。水彩画を始めたのだ。二元会に所属し、展覧会に出品するようになった。遍路や寺や仏像が多い。展覧会のたびに、遍路仲間に案内がくる。仕方がないから、誘い合わせて見に行く。すると、遍路姿の姿が仲間の後姿が作品に描かれていて、会場がおしゃべりの場にもなった。
 ただ、それも初期のこと。彼女はどんどん腕を上げ、毎回賞を取るようになり、有名画廊で個展をするようにもなった。単なるビール好きの友人だったが、えらい出世で、今ではみんなで「画伯」と呼んでいる。彼女はまんざらでもなさそうで、これで自信を持ったのか、相変わらず展覧会の案内を次から次へと送ってくる。みんなに。s方がないから、また行く。会場はまた、遍路同窓会と7なる。
 うるま御殿へは、定年後も時々行く。必ず食べるものがある。モズクの天ぷら、じーまみ豆腐、スクガラス、そしてニンジンンシリシリ。ニンジンの炒め物で、シリシリは細切りのことらしいが、響きがユーモラスでつい頼んでしまう。
 簡単なので自宅で作ることもあるが、今回はさらに簡単にした。ニンジンは皮をむき、ピーラーで薄く幅広で細長くそぎ切りする。塩を加えた湯でさっとゆで、取り出して水分を除く。オリーブオイル、コショウで和え、少しレモン汁をたらす。簡単さはズボラ料理の王道。彼女の絵は進化しているが、定年後に始めた僕の料理に、あまり進化はない。
 彼女が初期に描いた絵をもらったことがある。画伯がほんまもんになったら、お宝鑑定団に出してみよう。(梶川伸)2022.03.23


 

更新日時 2022/03/23


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