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編集長のズボラ料理(825) 豚の三枚肉と大根のショウガ煮

新ショウガの場合はは、輪切りにして煮て食べる

 新がつくと、何でもみずみずしい感じになる。新タマネギ、キャベツ、新ジャガ、新ゴボウ、新米、ちょっとジャンルは違うが、僕の好きな新酒。
 僕は日本酒が好きだが、新酒の味がわかるほど酒飲みでもないし、通でもない。それどころか、飲み始めれば何でもよくなるから、銘柄だとか、新しい、古いなど気にしない。
 とは言っても、「しんしゅ」という音の響きには、魅力を感じてしまう。大阪市・堂山町に三重県名張市出身の女将がやっている居酒屋さんがあり、地元の北村酒造の上槽式に誘われたことがある。新酒が飲めるというので、ためらうことなく参加した。
 神主による式のあと、新酒の試飲。まだ舌にピリピリする感じはあるが、それが新鮮さだと思った。蔵の社長が言った。「酒蔵で飲む酒は、結婚式で飲む酒と同じようにおいしい。味半分、気分半分ですから」
 なーるほど、である。新酒の響きには酒蔵の雰囲気が加われば、当然のことだ。さらに、気分が高揚する仕掛けが用意されていた。
 米の蒸し具合を調べるために、蔵人たちが食べたというひねり餅も作った。米粒を手のひらで押しつけながら餅にしていく。力はいるが、粘りの強い餅になる。
 泡汁も飲んだ。酒造りのタンクの壁に泡がこびりつく。これは酒のエキスで、うまみ調味料になる。これをみそ汁に入れる。だれかが、和風シチューだと言った。ここまで行くと、味よりも気分が大幅に上回ってしまった。
 高松市に住んでいた時のこと。しばしば居酒屋さん「遊」にお世話になった。女将に勇心酒造(宇多津町)の新酒の試飲会に誘われたことがあった。もちろん、喜んで参加した。酒もさることながら、社長の話がおもしろかった。「米を使った化粧品などを作っていて、酒よりも売れている」
 友人の家で飲んでいて、新ショウガが話題になった。友人は酒のつまみに、新ショウガを佃煮のように煮たものを冷蔵庫から出してきたからだった。その場にはいなかった仲間が作り、もらったのだ言う。
 その仲間がまた新ショウガを買いに行くと、売ってなかったという。8月のことだった。僕が買ったのは出始めの6月初め。「もう時期が過ぎてるんじゃないの」と、知ったかぶりで言った。ところが、その翌日にスーパーに行くと、あるではないか。
 反省をこめて、新ショウガを使うが、普通のショウガでもよい。豚の三枚肉を食べやすい大きさに切って、ショウガと一緒にゆで、脂分が少し取れたら、いったん取り出す。大根の皮をむいて乱切りにし、豚肉と一緒に煮る。味付けはだしの素、砂糖、しょうゆ、酒、ショウガの薄切り。
 新ショウガについてインターネットで調べると、時期は6月から8月と書いてあった。その後は、収穫したものを置いておき、それが普通のショウガになるらしい。つまり収穫した時は、いつも新ショウガらしい。何-んだ、である。(梶川伸)2025.09.24

更新日時 2025/09/24


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