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編集長のズボラ料理(245) カブのお茶漬けの素和え

あられのパリパリとした食感もいい

 年をとると、好きになる。大相撲のことだ。若い時は、「言うほどおもしろくない」と思って、野球やサッカーを見ていた。ところが、年をとった最近の自分を考えてみると、確かに好きになっている。
 定年になって暇だから、考える時間もあり、その理由を解明してみる。勤めているころは、相撲の時間にテレビを見ていなかった。ところが定年になると、家にいる時間が長くなる。すると午後4時過ぎから夕食までの時間は、実に中途半端な時間だという結論に行き着く。
 それは1日のサイクルに関係する。僕はNHKのラジオ深夜便を友にしているほどではないが、夏なら午前5時ごろ目がさめる。若いころよりは2時間ほど1日が早く始まっているわけで、午後4時は子どものころの晩ご飯の開始時刻に相当する。でも、お腹は減っていない。そこでテレビはNHKに切り替える。大相撲が幕内の上位の取り組みにあってくるからで、相撲を見ながら正真正銘の午後6時を待つことになる。午後6時なら、夕ご飯を食べ始めても決しておかしくない。
 つまり、夕方から晩ご飯までの時間つぶしに、相撲はもってこいなのだ。見ていれば関心を持つし、やがて好きにもなる。年配者が大相撲を見る最大の理由がそこにある。稀勢の里が横綱になったからではない。
 ただ、力士が力をぶつけ合って時間ばかりではない。しきり、という長いプロローグが曲者だ。しきりを見ていてもすぐに飽きる。琴バウワーも、しきりのたびにするわけではない。早足で塩を取りに行くのも、しめこみをポンポンたたくのも、最後のしきりの前だけだ。
 立ち合いまでの間をどう過ごすのか。それは大問題で、僕の場合は、砂かぶりのあたりに座っている有名人を探す。林家ペー・パー子はいつもピンクの服をきているので、僕のような芸能おんちにもすぐ見つけられる。それに大村崑。メガネはずり下がっていないが、時々見かける。「いた、いた」で、制限時間いっぱになるのを待つ。
 もう1つの時間つぶしは、懸賞の垂れ幕だ。いくつかかっているか、数えながら時が過ぎるのを待つ。懸賞金の世界のルターと言えば、永谷園ということになる。好勝負になると、必ず「永谷園」と書いた垂れ幕が土俵を回り、「この一番」になると何枚も続く。お茶漬けを何倍もお代わりする感覚である。
 年寄は相撲を見る。相撲を見れば、永谷園の幕が目に入る。だから年寄はお茶漬けが好きだ。三段論法の当然の帰結といえる。
 カブは皮をむいて、薄切りにする。永谷園でもどこでもいいが、お茶漬けの素で和えてしばらく置く。カブは冬がいいと思うが、今年は稀勢の里が横綱として土俵に上がる春も、食べてみるか。永谷園もたくさん懸賞をかけることだろうし。(梶川伸)2017.02.18

更新日時 2017/02/18


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