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編集長のズボラ料理(301) ササミの酒蒸しのネギ・セロリたれ

手でさいたら細長くならなかった

 鶏のササミが人気らしい。低カロリーでヘルシーで、良質なたんぱく質やビタミン類を豊富に含むからだろう。
 いいとこだらけではないか。これは使わぬ手はない。いや、ブームになる前も結構使っている。ただ、ネックが2つある。
 1つは白い筋を取り除くのが難しいこと。引っ張って取れればいいのだが、そうはいかない。だから包丁で切れ目を入れるが、丁寧にすればするほど、ササミの形が崩れていく。このやっかいさはズボラ料理の敵、と考えるのは筋違いか。
 もう1つはパサパサ感ではないか。少し脂身があった方がいい、と思う人は多いだろう。魚にしても、「脂が乗っている」はうまさの基準になっているし、マグロのトロにいたっては、高い金を出してでも食べる人がいる。
 僕も食べる。ただし、回転ずしに限る。しかも、しきたりを守る。その①決して大トロには手を出さず、赤身が多いトロで我慢する抑制の心を持つ。その②回転ずしのトロは1皿1貫がほどんどだが、決して2皿目を取らない自制心を持つ。
 肉もそうだ。さしがきれいに入った牛肉は、見ただけでよだれがたれる。それが神戸ビーフやら近江牛、米沢牛でればなおさらだが、値段が高いので、よだれをたらすだけで、買うことはない。
 どうしても食べたければ、すじ肉を買う。自宅近くのスーパーに入っている精肉店は佐賀牛を扱っていて、すじ肉は1袋600円ほどで売っている。これにコンニャクを加えて増量し、どて焼きにする。脂身はこれで十分。煮込む時間が足りないと固く、煮すぎると溶けてしまうので、注意は必要ではある。
 いいとこだらけの肉には外に、鹿肉がある。ヨーロッパでは人気があるらしい。健康志向も影響しているに違いない。
 遊び仲間5人で奈良をウロウロし、最後は近鉄奈良駅に近い居酒屋さんで、しめの酒を飲んだ。それぞれ好きなあてを注文し、みんなでつついて食べた。
 僕が注文したのは、鹿肉のハムだった。火は通してないのでパサパサではないが、脂分は少ない。珍しいので取ってみたのだが、全然減らない。
 2人は食べたことがないようで、最初から拒否反応。グルメ夫婦2人は喜ぶだろうと思ったが、全く口にしない。以前、鹿肉をもらったことがあったが、大変まずかったそうで、そのトラウマから解き放たれていないそうだ。
 そこで僕が奮闘する。しかし、食べ始めてから、ためらいが出た。直前に奈良公園で鹿をたくさん見たことを思い出したのだ。何とか食べ切ったが、奈良では当分、食べないことを心に誓った。
 ササミの筋を取り、酒蒸しにする。それを手でほぐすか、包丁で細長く切る。しょうゆ、みりん、少々のオリーブオイルを混ぜ、白ネギ、ショウガ、セロリをみじん切りにして加え、これをたれにしてササミにかけて食べる。パサパサもいいもんである。ただ、食べて思う。人気の最大に理由は安いからではないか。(梶川伸)2018.05.11

更新日時 2018/05/11


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