このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(392) キクナのミンチあんかけ

あんにショウガの味をつけてもいい

 鍋は和気あいあいとつつきたいものだ。しかし、4人以上になると、必ず殺気立つ。
 鍋は3人だとうまくいく。気心が知れていれば、具材を切って準備する者、鍋に入れる者、食べるのに専念する者と、自分が何をすべきかをわきまえている。だから争いはない。
 そこまで仲良くはない4人以上になると、そうはいかない。具材の準備は見えない部分なのでよしとするが、鍋に入れる段になると、一気に緊張が高まる。みんな鍋奉行という主役を張りたいのだ。
 では、鍋奉行はどうして決まるのか。何となくである。何となくそれらいし人が「僕がやろか」と、あいまいに言ってスタートする。しかし、気心が知れていなと、疑心暗鬼の手探り状態で、主役争いが行われる。
 何となく、誰かが自分の箸(はし)で具材を入れ始める。すると別の人間が「具を入れる箸は別にした方がいいね」と、さりげなく言う。ジャブである。
 最初に豚肉を入れたとする。すると、「魚の方がだしが出るんじゃないの」と対抗してきて、自らの箸で魚を入れる。これが海鮮、いや開戦の合図となる。そうなると、争いはエスカレートの一途となる。「隗(かい)より始めよ、だ」と言って、さらに別の人間が貝を入れ始める。
 鍋が一杯になってくると、4人目が「1度ふたをした方がいい」と言って参戦し、3人の争いにふたをし、主導権を握ろうとする。次にふたを空けるのも駆け引きがある。ふたを穴から蒸気が出てくるのを、見逃した者が負けとなる。
 食べ進んで後半の山場は、キクナである。「キクナは早く上げる」。それは意見が一致している。しかし、どのくらい短い時間のか。「サッと」なのか、「ササッと」なのか、「サササッと」なのか、それぞれの維持が激突し、鍋の中で箸がぶつかり合う。
 争いは最後まで続く。おじやで溶き卵を入れる際、火を切ってからにするかどうか、卵を溶き入れた後、かき混ぜるかどうか、ふたをするかどうか。
 キクナを軽くゆで、皿に並べる。鶏ミンチ、玉ねぎとシイタケのみじん切りを油で炒めたうえ、だし、さとう、しょうゆを加えて煮る。最後にとろみをつける。これをキクナの上にかける。
 キクナはシャキシャキ感が残っていなければならない。だから、ゆでるのは、サササッとくらいがいい。(梶川伸)2020.01.16

更新日時 2020/01/16


関連リンク