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編集長のズボラ料理(207) かまぼこの鯛みそ乗せ

面倒くさければ、あぶらなくてもいい

 かまぼこは存在感があったはずだ。お中元やお歳暮でも、かまぼこはランクが高かったた。
 おやじのもとへは、山口県の秋芳、白銀がセットになって届いた。これは僕も大好物で、よくもらって帰った。
 シャキシャキした食感が好きだった。真っ白で、高級感も感じさせた。秋芳と白銀と、どちらが高いのか考えながら食べていた。おやじが亡くなってから、口にすることはなくなり、いつの間にか影が薄くなってしまった。
 愛媛県宇和島市から神戸市に変わってきた友人のお歳暮は、出身地・宇和島のジャコ天とかまぼこのセットに決まっていた。ジャコ天は遍路の途中でも買い食いをするくらい好きだ。宇和島でご飯を食べる時、ジャコ天定食があればいいと思う。それがないので、わざわざ別に頼むこともある。
 ジャコ天だけでも満足するのに、友人のお歳暮はシコシコも強く主張してくる。甲乙つけがたいので、どちらをメーン料理にするか、いつも迷いながら食べていた。残念ながら友人が他界し、かまぼこの方は口にすることがなくなってしまった。
 酒屋さんに行くと、「いたわさ」を頼んでいた時期があった。かまぼこを切って、ワサビしょうゆで食べるだけである。かまぼこは板についている。板とワサビ。だから「いたわさ」。その呼び方が粋に思え、そう呼んで気取っていた。それが板についているように感じていた。実態は何ちゅうことはない、名段の安いかまぼこのワサビしょうゆだったのだが。
 いたわさもあまり食べなくなった。注文している人も見かけなくなった。居酒屋さんにいたわさは生存しているのか、疑問に思うほどだ。
 飲めない友人を誘った場合、その友人のためにソバ屋に行くことがある。あまり酒のあてがないので、やむを得ずいたわさを頼むことがある。ソバ屋にはまだ生存していてうれしくなるが、しょせん端役だから、肩身の狭い思いをしているに違いない。
 今回の料理も、かまぼこは縁の下の力持ち的である。鯛の切り身を塩焼きして、身をほぐす。みそをみりんと酒で延ばす。ミョウガ、ネギとほぐした鯛を加えて混ぜる。それを切ったかまぼの上に乗せ、オーブンで軽くあぶって食べる。
 かまぼこは見えにいく。だからハシコシコの高級かまぼこでなくてもよい。かわいそうなかまぼこ。(梶川伸)2016.08.23



 

更新日時 2016/08/23


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